2017-2018年に販売していた「注染+墨染め」手ぬぐいを再販いたしました。
当時、なかなか思うように染められなかったこともあり、一旦販売を終了しましたが、再販をのぞんでくださるお客様とお話しするうちに、またやってみようかな、という気持ちになりました。(この7年ほどの間に『ぜひ再販を!』とご連絡をくださったり、お声をかけてくださった方々に、このお知らせが届きますように。)
墨についてや、豆汁処理のことを一つ一つ確認し、試し染めを繰り返しているうちに季節も変わってしまったのですが、ようやくお披露目できるレベルに辿り着けたと思っています。また少しずつ、ご意見を伺いながら調整していく予定です。
現代は便利な薬剤があり、どんな色合いにも、本来は濃く染めることが難しい自然素材の布にも、鮮やかに染めることができますが…
当店が天然のもので染める際に心がけているのは、古来からの方法、天然の素材を使うことなので、今回も墨と膠、大豆の汁のみで地色を染めております。(とはいえ、柄は注染ですので、化学染料ではあるのですが。)
豆汁は「まるごと大豆飲料」が手に入れば使いますが、ない時は大豆を水に戻し、ミキサーにかけて絞って使っています。(しぼりカス=おからは料理にできるので嬉しいです。)
今回の再販に向けて、一番悩ましかったのが墨のことでした。調べていくうちにわかることもあれば、よくわからないこともあり、これは自分で試していくしかないと思いました。最終的には合成糊ではない、膠を使った墨液を使い濃度を調整しながら染めております。この墨液も繊細で、温度によりゲル化してしまったり、時間の経過で劣化するので、その扱いに注意を払っています。浸して、干して、また浸して、干して、その後に、豆汁に浸して、干して、その後は暗所で寝かせておき、最後は水洗いを徹底的にしてから干して仕上げています。
とにかく、最後の洗いが大変で(墨液にどっぷりとつけて揉み込んで染めるので、すすぎも大変…)写真でもわかりますが生地が毛羽立つほどに洗っています。それですので、お使い始めから柔らかい手触りです。
ここまですすいでも、はじめのうちは多少の色落ちがあり、生地も通常のものと比べると厚みがあるように感じられるかもしれませんが、不思議な魅力を持つ手ぬぐいです。
正直なところ、これは上級者向けの手ぬぐいのようにも思い、どなたにもおすすめできるものではないと感じております。しかし、当店の藍染めや植物染めの手ぬぐいを長年お使いの皆様には、ぜひ、とおすすめしたい気持ちがあります。
日本では古くから豆汁を使う方法があり、墨染めも室町時代には行っていたようです。天然のものを使い、少し古い文献などにあたりながら、試し染めを繰り返していた時間はとても楽しいものでした。


