冷たいものがまだまだ美味しい季節、でも、夏に「冷え」を溜め込むとあとが大変なので、冷たいもの、冷房は控えめに過ごしております。そんなことを考える夏のおわり。
さて、お待たせしておりましたが 手ぬぐいの『箸格子』 が入荷致しました。
新色の黒も仲間入りしました。3色も並ぶとなんだか嬉しいです。(赤は始めの頃に少し色落ちしますので、お洗濯の際はお気をつけくださいませ。)
そして、ありがたいことに、すでに来年の春から夏のイベントの予定がいっぱいに。新作も着々と出していかなくては…。
この秋には『風知草』が復活しますので、どうぞお楽しみに。しばらく販売をお休みしていたので、『廃番ですか?』というお問い合わせをいただきますが、今まで、あひろ屋は廃番にした柄はありません。(「縞」も廃番にしたのではなくて、注染では難しい、ということで保留中の柄です。あと、「簾」もいずれ復活予定です。)
開店当初から思っていたことは、生み出した柄を廃番にはしたくないということ。染める上でデザインを改める必要があったり、リ・デザインする、ということはあっても、発売した柄をおしまいにするというのは考えられません。一つ一つに思い入れがあり(柄によってはある個人に捧げられているものもあり)、稚拙であっても、その時の自分の表れなので、大切に一緒に生きていこうと思っています。逆に考えれば、廃番にはできないのだから、世に出す時に、少し厳しい視点で、これは何十年という時間に耐えられる柄なのだろうか、美しいのだろうか、これを販売する意味があるのだろうか、ということも、考えていかなくては、と思っています。
それぞれの柄を描いていた時の思いや、染める際に染め屋さん(職人さん)たちと交わした言葉、その時の情景などを不思議とよく覚えています。
そして、お客様からいただいたご感想、柄にまつわるエピソードなどをうかがっていると、あひろ屋の柄はすでに、私一人のものではないんだなぁ、と感じることがあります。
それなので、勝手に廃番にはできないし、たとえあまり人気がない柄でも、細々と染めてゆければ、と思うのですが。
涼やかな声で楽しませてくれていた鈴虫ですが、その声が日々細くなり、いろいろと悩みました。残り少ない時間であれば、虫籠の中で終わるより風を感じる野の方がいいのかな…、でも虫籠育ちの彼らにとっては、野の世界は危険がいっぱいで大変なのかもしれない。
結局、陽が暮れた時間にそっと野に放しました。元気が残るうちに、草の上を歩かせてあげたいと思いました。
空になってしまった虫籠は寂しく、野菜を切るたびに「もう鈴虫用はいらなかったんだ」と思い出します。昨夜、窓を開けていると、秋の虫の声が聴こえてきました。あの鈴虫たちも鳴いているかもしれません。
虫籠の土の中には沢山の卵を残してくれたので、来年の春が今から楽しみです。